「信仰の落とし穴」 2020/8/9 礼拝メッセージ

マタイ14：22-33

先週は、イエス様が5つのパンと2匹の魚だけで5000人以上の人々を満腹にしたという箇所でした。きょうはその直後の出来事で、「イエス様が湖の上を歩かれた」という奇跡です。確かに不思議な出来事ですが、先週の奇跡のスケールの大きさに比べたらやや地味な印象です。ところが4つの福音書のうち3つが、この出来事を記しています。いったいなぜでしょうか？

先週の偉大な奇跡を見て、群衆はイエス様を王様に担ぎ上げようとしました。自分たちが得をするからです。そんな雰囲気を弟子たちからも感じたイエス様は、急遽弟子たちを舟に乗せ、群衆から引き離しました。大きな奇跡を体験しても、それが神様への深い信仰に結びつかず、むしろ自分たちの自慢のようになってしまう。だから、人が水の上を歩いているのを見た程度で、今度は恐れおののいてしまうのです。旧約聖書に出てくるエリヤも、信仰の大勝利から、一転して、恐怖のどん底にたたき落されました。これが人間ではないでしょうか？

しかしイエス様は、弟子たちを舟で送り出してから12時間近くも祈っておられました。どんな嵐の中でも動じないイエス様の落ち着きは、この祈りの姿勢にあるのです。わたしたちも、苦難の時はもちろんですが、物事がうまくいっている時や、大きな勝利を収めて興奮しているような時こそ祈りましょう。

湖の上を歩いてくるのが幽霊ではなくイエス様だとわかった時、ペテロが「わたしも水の上を行かせてください」と願い、イエス様はそれをゆるしました。そしてしばらくは彼も歩くことが出来ました。しかし風を見て怖くなり、沈み始めます。イエス様はペテロをつかんで引き上げてくださいました。どんなに毎日祈っていても、目に見える状況を見て怖くなり、イエス様から目をそらしてしまい、沈んでしまうわたしたちです。だからこそイエス様が十字架で死んでくださり、よみがえられたのです。そのおかげでイエス様は「信仰の薄い人だな」と言いながらも、わたしたちを引き上げてくださいます。わたしたちの信仰も、わたしたちの勝利も、自分自身の熱心さではなく、イエス様の十字架によるものなのです。

（永田　令牧師）