土の中から

「土の中から」 2022/2/20 顕現後第7主日礼拝メッセージ

ルカの福音書6章27~38節

北京オリンピックが閉幕します。オリンピックは一時的な休戦にはなっても、本当の平和を実現することは出来ません。本当の平和は1人1人が聖書の御言葉を読み、信じ、行っていく時に実現します。しかし今日の御言葉「あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行いなさい。あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。」(6:27-28)、「あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい。」(29)は、実現不可能と思えるほど難しい言葉です。敵を心の中で愛したり祝福したりするだけでなく、敵のために実際に行動せよ、と言うのです。当時ユダヤ教で教えられていた「自分にしてほしくないことは、人にもしてはならない」という消極的な教えではなく、「自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい」(31)という積極的な行動を、イエス様はお命じになったのです。

これはわたしたちの常識からかけ離れた教えです。わたしたち人間は、すべてを自分中心に考えてしまいますので、親しい人のことさえ愛せず、ましてや自分の敵なんて絶対に愛することが出来ません。これが肉なる人間の本質です。

しかしイエス様はそんなわたしたちの罪の本質をご承知の上で、それを全部ご自分が背負って、わたしたちの代わりに十字架にかかってくださいました。「呪う者を祝福し、侮辱する者のために祈る」これはまさに十字架上でイエス様がされたことです。敵に命を与えることが出来なかったわたしたちの代わりにイエス様が十字架で命を与えてくださいました。このイエス様を救い主と信じて洗礼を受けた人は、罪びととして死に、イエス様によって新しく生まれた人です。ちょうど種が蒔かれ、土の中から新しい芽が生えるように。そしてその人は「イエス様に似た者」となっています。自分を呪う者のために「父よ、彼らをおゆるしください」と祈られた、あのイエス様に。わたしたちが葛藤を覚えながらも敵を愛していく時、その姿を通して人々はイエス様と出会い、「本当の平和」が実現します。信じるならばそうなります。「洗礼によって直ちに霊のからだになるのではない。そう見えるようになるのではなく、そう信じるようになるのである。」【マルチン・ルター】

(永田 令 牧師)